祖母と日々過ごすなかで、これまで「お年寄り」として接してきたことを何度となく恥じることとなった。わたくしの目の前にいたのは朧げな世界に生きる「恍惚の人」にはほど遠く、ナイフで栗を剥く手つきひとつをとっても迷いがなく鮮やか、肌を見られることにもはっきりとした抵抗がある誇り高き女性だった。その上会話が出来て風呂もトイレも介助なし、スタスタ歩くのでちょっと超人が過ぎる。
はっきりいって自分は99年間も生きるとは思えない。「あの人、気づいたら遠い土地で死んでたね」と噂されるぐらいの感じが理想で、そろそろかなと思ったら諸々片付けて居なくなりたいと思っている。故郷で死にたくないのと、自分が弱りゆく様を人に見られたくないというのだけは昔から変わらない。だからこそ、それと真逆のいのちの有り様を見せる祖母から目が離せない。すごい人とご縁があったな、と思っている。