好きな喫茶店がある。
なんでその喫茶店のことが好きなんだろう、と考えたときに、「そう、これこれ」ってやつなのだなと思った。変わらぬ店内を見て、変わらぬメニューを見て、変わらぬ盛り付けを見て、「そうなんだよ、この店はこうなんだよな」って思いながら、その安心感と共にコーヒーを啜れる。だから好きなんだ。
当然のようにコーヒーに添えられたしるこサンド、スパゲティーに盛られたはりはり漬け、すっかり擦れてくたびれた天鵞絨の椅子、女性自身とスポーツ新聞、窓際のミュシャ、フリーダ・カーロのコースター、アール・デコ調のランプ、そこにフクロウの置物が入り乱れてこそ、この喫茶店なのだ。カーサ・ブルータスなんて置かなくていい。いいかい、リサラーソンの置物なんて、くれぐれも飾らないでくれよ。
次に外出許可が出たら、ここでイタリアン・スパゲティーを食べるんだ。その傍らにははりはり漬けが。そして、トッピングには手でちぎったような味付け海苔が乗っている。そうそう、これなんだよ。