読書のすすめ① / by co cayu

『小粥の語彙や言葉選びに影響した人物たちと、その作品を知りたい』というお言葉を頂いたので、僭越ながら少し紹介させていただきます。最近のブログはムニエルやブルボンに文句ばかり言っておりましたから、ここらでひとつ、なるほど奥ゆかしい部分もあるんだなってイメージチェンジを、え?もう遅い?いやあ、そんなこと言わずに。

わたしがその作家の作品を殆ど読んだ、と言えるのは芥川龍之介村上春樹でして、芥川は小学校高学年の時にどハマりしました。彼が作品のヒントにしたという仏教説話集『今昔物語』は、芥川が得意とする人間の醜さや愚かさを鋭く描写するための、最高の土台になっていると思います。が、彼の文学に触れるなら説話的な『羅生門』や『鼻』ではなく、次の二作品を読んで頂きたい。『あばばばば』『白』。どちらも “芥川らしからぬ” ユーモアがあって、心温まる話です。実際、芥川が妻になる女性に宛てたラブレターって、可愛いんですよね。「恋愛はただ性欲の詩的表現を受けたものである」とか言っていた男が、文ちゃんに対しては「キミがお菓子なら頭から食べちゃいたい」とか言いますから。(芥川の「食べちゃいたい」はカニバリズムを連想しかねませんが…) 。 この二作は特に、芥川の印象を変えた作品たちでもありますね。

村上春樹はその独特な世界観と言い回しから、「熱烈なファンになるか、敬遠されるか」がハッキリ分かれる作家だと思います。鼠三部作と呼ばれる初期の作品がファンの中でも特に支持されている印象がありますが、わたしが好きな作品は『ダンス・ダンス・ダンス』

春樹の描く主人公って基本的に取り柄がなくてパッとしないです。そんな彼がある日突然日常から引き剥がされ、思いっきり別の世界に放り込まれるような出来事が起こります。登場人物の女性たちと次々に寝るわ、傷ついているような怒っているような、あまり捉えどころのない主人公が、「あちら側」と「こちら側」を行き来しながら、徐々にその宿命を受け止めてゆく。女性にモテることはもちろん、猫が登場し、ありあわせのもので簡単な食事を作り、アイロンをきちんとかけて、パスタを几帳面に茹で、サンドウィッチ、ウイスキー、「やれやれ」…と、お決まりのパターンが多め。でも、彼の作品はこうでなくちゃいけないと思っています。この感覚は歌舞伎でいう「大向こう」みたいなものだと思っていて、見巧者の客が決まった場面で「待ってました!」と声を掛けて芝居が盛り上がるように、春樹作品にもお決まりの流れがあってこそ、読者が盛り上がるようなところがあります。読みながら、「よっ!待ってました!」とやるのが楽しいんですね。村上春樹という文学を理解しているぞ、という思いを込めて、まぁ、あくまでわたしの場合ですけども。

つい長くなってしまった。、好きなこととなるといけません。三浦綾子遠藤周作高村光太郎についても語りたかったですが、まぁまたの機会に。うーん、ねむたいねむたい。