タヌキ / by co cayu

「まんじゅうこわい」という演目の古典落語が大好きなのだけど、わたしと「まんじゅうこわい」の出会いは古く、8才にまで遡る。

国語の授業かなにかで「まんじゅうこわい」の劇をやることになった。わたしの役はまんじゅうを投げ込むタヌキの役。もう、配役の時点で…という感じだが、体当たりで演じたタヌキ役のおかげでクラスでは「あの子面白いんだね」みたいな空気になった。さらにはクラスで一番モテていた野球部のSくんががわたしに興味を示したことで、彼のことを好きな女子3人から掃除中に「Sくんのことどう思ってるの」などと問い詰められる羽目になる。かたやその頃のわたしは中身もタヌキのようなもので、誰が好きとか嫌いとかいうよりも、当時の日本を混乱に陥れていた某カルト教団の尊師の動向のほうが気になる毎日だった。わたしがタヌキだということが分かると、その女子たちはトイレ一緒行こう、と手のひらを返すように友好的な態度になったのを覚えている。「まんじゅうこわい」はそれまでのクラスの立ち位置を変えた、わたしにとっての出世作(?)なのである。

ちなみに当の本人、まんじゅうはそうでもないが、とらやの羊羹がこわい。夜の梅が特にこわい、あと、濃いめのお茶もこわいな。

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