芸大美大 / by co cayu

【マンガ大賞2020は『ブルーピリオド』に決定】というニュースが流れてきた。このマンガ、入院中に「これ面白いなぁ」と読んでいたことを思い出す。芸大美大受験を経験した人なら、読むなりきっと、変な汗をかくんじゃないでしょうか。

主人公の男子高生は、なんでもソツなくこなし、成績も優秀。仲間と楽しく過ごしながらも、どことなく空虚な日々を送っている。しかし、ある一枚の絵がきっかけとなり「東京藝大」を目指すことに…。

東京藝術大学といえば日本の芸大美大の最高学府。受験生は当たり前のように美術予備校へ通い、合格者は7割が浪人生という恐ろしく狭き門である。作中では、個性的な登場人物たちとともに、主人公が成長していくさまがリアルに描かれている。そもそも、藝術って過酷な世界だよねえ。

高校3年の春、わたしは京都の芸大を目指して、片道1時間の画塾に通い始めた。放課後、せっせと電車(ディーゼル車)に乗り、画塾へ。3時間のデッサンをして、終電で帰る。高校の宿題は電車の膝の上でやっていた。夏休みにデッサン合宿に参加したあと、ダウンして1ヶ月入院するなどした。その時点で自分が芸大合格レベルじゃないことぐらい分かっていて、教育系の美術科に目標を変えた。受験科目にデッサンがない、そのぶん、立体や着彩をやり込もうということになった。思い返せば、なんだかいい時間だった。時間をかけて眈々と準備する、みたいな。まるで大石内蔵助のような。いや、ちょっと違うかもな。

8Bとか9Hとかの鉛筆を買うことはなくなって、もうあんなに鉛筆の先を尖らせることもない。練りゴムも使わない。羽根ぼうき、デスケル、巨大なクリップも。不思議な時間だった、あの時の自分はなかなかに素敵だった。