4/15 / by co cayu

 カトマンズはすこぶる空気が悪い。四六時中マスクをしているにも関わらず、わたしもすぐに喉をやられてしまった。

 

「喉の調子が悪いんだよね」

そう言うと、行きつけの喫茶店のみんながこぞって知恵を出してくれた。

 「薬局に行って、症状を言って薬を貰うんだ」「たくさん貰わなくていいよ、2日分ぐらいだけとりあえず買うんだ」「飴もあるよ」「白湯を飲みなさい、白湯を」

 

と、そこで前歯が2本だけ残っている寡黙なダイが口を開いた。

「これを口に含んでおきなさい」 

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 一同フリーズ。

 

差し出したのは一見、木の枝。周りのネパール人たちがあからさまに怪訝な顔をし、よくないよ、薬局行った方がいいよ、と耳打ちしてくる。ダイ、なんなのこれ?漢方?それとも(法的に)アカンやつ?

 

ダイは質問に答えず、「少し噛んで、口にずっと含んでおけば治る。寝るときも。これあげるから、やってみなさい」まるで秘儀を教える師匠かのような仰々しい顔をしている。

  「分かった、ありがとう」

わたしが平らな目をしているのを察して、ダイは試しにその枝の欠片を口に含んでみせた。ほら、どうだ。

 他のネパリは依然として首を横に振っている。判断が難しい。とりあえずお礼を言ってその木の枝を受け取り、仏画制作へ向かった。

「先生、見てこれ。喉にいいんだって」

とディパック先生に見せると、

「ん?なにこれ。さっさと薬局行きなさい薬局!」と一掃されて終わった。

 

木の枝は、まだポケットに入っている。