やさぐれてきた。
入院生活にすっかり慣れた証拠だと思う。色んなものが気にくわない。当初は「何でもありがたく頂きます」と残さず食べていた病院食も、今や「またムニエルやないかい、なんやお前、週1か!」「ちょっと待って阪神くん、煮物はもうええから」「おい!この献立、俺の弟子やったらパンパンやで」とわたしの頭の中の巨人師匠が黙ってない。
それから、ベッドの脇にテレビが置かれているだけでムカつくので、画面に高野山のお札を貼って封印した。母がそれを見て「結界」と独白する。ナースに信仰を問われても仕方ないだろう。
入院生活がイヤなわけじゃない。今、娑婆に解き放たれても困る。規則正しい生活を送って治療に専念している、という状況そのものに安心するし、この病気の治療以外に何がやりたいのか分からなくなってしまった。絵描きとして各地で精力的にイベントを行っていたことが遠い昔のことのようで、今は体力が落ちて何をするにも自信がないし、ロマンチックなデートをするには圧倒的に毛不足だし、献立に文句を言っているぐらいがちょうどいい。
文句が出るのはいいことだ。エネルギーが有り余っているんだ。そういうことに、いたしましょう。ねぇ師匠。