ムニエル / by co cayu

そろそろムニエルについて話そう。

ムニエルのことは知っているかい?魚に小麦粉をつけてバター焼きにした、フランス料理のことだ。表面はカリッと、中は非常にジューシーで…

なに、なぜ急にムニエルの話をするのかって?そんなに不安にならなくてもいいさ。だって、きみがムニエルを最後に食べたのはいつだい?それは、何の魚で、どんな盛り付けだった?きっと、忘れるぐらい過去のはずだ。だからきみは、これまでもこれからも、ムニエルを自分の問題として捉える必要はない。

ただ、僕のいる世界はちょっと事情が違う。ディナーに関してはね。ここでは、メインディッシュとして、ムニエルが頻繁に登場するんだよ。何度も何度も出てくる。鮭の時もあるし、よく分からない白身魚のときもある。でも、何の魚なのかは重要じゃない。なぜムニエルじゃなきゃならないんだ、ってことだ。ここは日本だぜ?ごはんがあって、味噌汁がある。となれば、焼き魚で百点だよ、誰も文句を言うはずがない。でも、どうやってもムニエルなんだ。献立を見るたび発狂してるよ。これはつまり、誰かが、何らかの目的を持って、コントロールしているのさ。焼き魚を、煮魚を、全部ムニエルに変えてる。バターの誤発注なのかもしれない、小麦粉会社との癒着なのかもしれない。なんにせよ、ムニエルじゃなきゃいけない理由があるんだ。そのうち、毎日ムニエルになるだろうね。

なに、僕の世界の話さ。きみは気にしなくていい。

※うちの病院食は週1でムニエルが出ます(実話)