行きも帰りも豪雨にまみれ、岡山出張からようやく国東半島に戻って参りました。仏を描くということは修行そのものですが、自分が信仰する尊格を描ける、しかも護摩堂の壁に、ということがとにかく嬉しくて、お不動様を拝んできてよかった、と毎日感謝しきりでした。
参考にしたのは昨年個展をさせていただいた京都・ 御室仁和寺の金堂に描かれている五大明王図で、個人的にも特別な思い入れのある仏画です。初公開となった2018年の特別拝観で、中央のお不動様に鋭く睨まれて震え上がったと同時に、いつか自分もこんなふうに魂の宿った大きな仏画を描きたいと強く願いました。そのあと拝観を終えて二王門に差し掛かったところで「弘法大師様の御影を描いてほしい」とご依頼の連絡をいただくという、とてもドラマチックな日でありました。
制作のラスト2日間、【大竹伸朗展】のトークイベントで大竹氏がおっしゃっていた「美術界ってこっちがとんでもなく傷つくことを言ってくる奴とかいるからね。でも俺はこれでいいんだ、って暴走し続けるしかない。ブレーキ覚えちゃうと終わり」という言葉を思い出して、いやブレーキ踏まんとこうって徹夜で駆け抜けました(それまでの4日間は「気は強いが身体は弱い」でお馴染みの小粥なので制作リズムを崩せぬままにいました)。
AIが何を学ぼうとも、わたしは魂の入った神仏は人にしか描けないと思います。そして、絵師の限界を越えてようやくお出ましになる尊格がいるのだということもよくよく分かりました。そもそもに五大明王様を穏やかなテンションのまま描き切ろうという姿勢が傲慢であったということです。今回の壁画制作で本当に多くの気づきをいただきました。ありがたい。
神仏に限らず壁画のご依頼があれば全国どこへでも参りますので、お気軽にお問い合わせくださいませ◎
・以下Instagramの投稿文より引用
【福王寺護摩堂 五大明王図】
このたび、岡山県真庭市の福王寺・小谷御住職にお声掛けいただき、護摩堂内に五大明王図を制作いたしました。五大明王様は貪瞋痴を降伏、退散させるといわれます。
護摩堂に篭りひたすらに仏様と向き合うことが許される、仏画師としても不動尊信者としても最高の時間でした。9日未明に完成し、そのまま小谷御住職にお護摩を焚いていただきまして、炎を纏った護摩木が崩れたと同時に己のなかの迷いがすべて消えたような清々しさに包まれました。わたくしができるのは画道を貫くことのみ。
今回、予定していた5日間では終わらず1日延長することになり、プロとして大変お恥ずかしい限りですが(ラスト2日間は完徹…)、御住職とご家族の手厚いサポートにより無事完成することが出来ました。蒜山という環境も素晴らしかった。重ねて御礼申し上げます。
10月1日には福王寺さま境内での柴灯護摩、弘法大師女子会トークイベントや拙作仏画の展示等も予定しています。五大明王様 壁画をご覧いただきたいのはもちろん、火渡りなどもあります。こちらは別投稿で改めて告知いたしますね。
のうまくさんまんだ ばざらだん かん!
福王寺 ウェブサイト https://fukuouji.org/
※御住職不在の場合もございますので、護摩堂の五大明王図は自由にご覧いただけますが、お寺では良識のある行動をお願いいたします。まずは本堂にお参りください。合掌
今回の壁画は世界遺産仁和寺 で普段非公開となっている金堂の五大明王様を模したものです。過去の偉大な絵師へ心からの尊敬と敬意を込めて。