世界には本当に多種多様なおじさんが生息する。おじさんはあらゆる環境に適応するため陸地であれば森林限界以上の高山地域にもその分布が見られる。過去、自らの肉体のみで世界の最も高い地点へ到達したのもおじさんであり、また逆に海の深くへ潜ってみせ人間の生存可能領域の定説を覆したのもおじさんである。宇宙を目指すおじさん、記者会見で泣きじゃくるおじさん、伝統を守るおじさん、悪態をつくおじさん。おじさんは世界で増え続けている。
例に漏れずわが病棟にもやはり色んなおじさん(患者)がいるのだが、筆者はその中でもひときわ殺気を放つおじさんを発見した。こけた頬、無造作に伸びた髪…圧倒的な存在感を持つそのおじさんを『野武士』と名付け、しばらく観察することにした。ちなみに今日、野武士は点滴に繋がれて身動きが取れなくなっていた。野武士〜〜!!
筆者には元々、おじさんを観察する癖がある。ネパール滞在中に見かけたネパールおじさんがきっかけだ。ネパールおじさんのほとんどは、いい加減で調子が良く、ほとんど働いてる様子がない。路上だろうが寺院の階段だろうが所構わず昼寝し、野良犬に寄り添われていたりする。多くのネパールおじさんはまるで縄張りを守るように、毎日同じ場所にいる。世界のおじさんのなかでも野生に近いネパールおじさんは、勤勉と名高い日本のおじさん(学名:ニホンオジサン)とは対極にあるといっていいだろう。
おじさんは絶滅の心配がないが、おじさんは仏滅の心配をすることがある。おじさんには、いいおじさんもいれば悪いおじさんもいる。おじさん、わたしにお布施をよこしなさい。おじさん、今日もご安全に。