何気なく車の中で流していた宇多田ヒカルの「あなた」を聴いて、母が「仏教的だね」と言った。そう、元々彼女の歌は仏教色が強くて、そのなかでもこの曲は「業火(ごうか)」「迷いと煩悩」など最も直接的なワードが出てくる。すると母が「二河白道っていう言葉があってね」と言った。にがびゃくどう、美しい音だなぁと思った。この言葉は、浄土教における極楽往生を願う信心の喩えとされている。
目の前に、浄土に向かう真っ白な道がある。道は2つの河に挟まれていて、ひとつは貪欲の水がうねる河、もうひとつは怒りの炎が燃え盛る河。後ろからは追っ手と獣の群れ。そんななか、後方から釈迦の「この道をたずねていけ」という声、前方からは阿弥陀の「直ちに来たれ」という声がする。そして衆生が一心に疑いなく進むと、浄土に至る…というもの。
コロナだかパロマだか知らないけど、まるで末法を思わせる混濁の世において、今こそ各々心の拠り所があればと思う。わたしにとってはそれが仏教だから、この目の前にある真っ白な道をただひたすらに走るだけ。
自己に問うのは生命への覚悟、他に向けるべきは思いやりと想像力。いつからか「理想」が「欲」にすり変わっている人を見つけ、人間の「永遠に満たされない心」について考える。私利私欲という「終わりのない苦しみ」の種を未来に蒔き続けていることには気づかない。それから、松前漬けは食べすぎると浮腫んでよくない。最近は、そんなことを思っている。
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